WEBサービス制作で考える「サイト名」と「世界観」
今日のタロットサイト制作会議は、
・サイトタイトル
・サイト世界観
を皆がそれぞれ考えて持ち寄りました。
タイトル決めるのはどんなサイトにするか決めたあとじゃないの?とは思いましたが、とりあえず聞いてみました。
すると、意外とこれがよかったんです。
僕の貧困な発想ではハワイをテーマにしたタロット=「ハワイアンタロット」という、それ考えたって言えるの?なレベルでとどまっていたわけですが、いろいろ出てきました。
多かったのはハワイの言葉をタイトルにつけるというもの。
アカハイ(思いやり)、ロカヒ(調和)、オルオル(喜び)、ホロホロ(散歩)
など。
あなたは何がいいと思いましたか?
僕はこの中で「ホロホロ」が圧倒的にいいなと思いました。
なぜか。
ハロハロ、オルオル、ハアハア、など二回繰り返す言葉はハワイを連想させます。
僕のようなハワイ=ヤシの木ぐらいのイメージしか持ってない人間でもそのイメージがわきます。
そして語感がいい。
日本語でホロホロというと泣く擬音で使いますが、悲観的な泣きというよりは感動的な泣きに使われます。
つまりプラスイメージに働くのです。
もちろん、日本語のホロホロとハワイのホロホロは意味が違います。
でも自分が普段なじみのある言葉と通じるものがあると無意識に結びつけてしまうんですよ。
これが「言葉の第一印象」です。
人を見た目で判断するなと言いますが、見た目の第一印象ってなかなかひっくり返りませんよね。言葉もそれと同じです。
ネットサービスでアカウントが停止されることを「垢BAN」って言いますよね?
BANってどういう意味だと思いますが?銃で打たれる音が「バン」だから打たれる=死亡=アカウント停止だから垢BANって言うんだろうな、とか思ってませんでしたか?
まあ僕がそう思ってたんですけどね。
確信していたわけではありませんが、なんとなくそんな感じかなーぐらいでそれ以上突き詰めなかったんです。でも大体こんなもんです。そしてそれが大事。
BANは英語で「禁止」「権利剥奪」という意味です。
つまり「アカウント停止」という意味です。
BANが禁止の意味ということは、知らない人のほうが多いと思います。
でも、知らなくても響きだけでなんとなく意味を想像できますよね。
そして言いやすい。だから流行るんです。
意味よりもまず響きが重要です。
本当の意味を理解するのはそのあとでいい。
この理屈はGoogle検索にも生きると思っています。
検索1位:当たるタロット占い
検索2位:ホロホロタロット
と並べるとどうでしょう?
ありきたりな上のサイトより、未知数の、でもなんか雰囲気良さげな下のサイトのほうを押したくなりませんか?
これが弱者の戦い方です。ランクは下でもクリックされる数が多くなればそれはユーザーに求められている(エンゲージメントが高い)ということなので、Googleの評価もそのうち上がります。
権威性をひっくり返すほどの効果は今のアルゴリズムでは期待できませんが、真っ向勝負を挑むよりは遥かに現実的ではないでしょうか。
その意味でホロホロはハワイっぽさと優しさや前向きなイメージを与えてくれるとてもいい言葉だと思いました。
ちなみにインパクトが大事だからと「100%当たる」とか「過去に類を見ない超絶的中率」とかいう煽り文句に逃げるのはやめるべきです。
理由は簡単で、当たらなかったらユーザーを騙したことになるからです。
占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦だし、当たったと感じるかどうかは本人次第なところもあります。
最初から煽ってると反発心から当たらないことを期待するようになります。
「へえ、絶対当たるんだ、やってみよー」と無邪気に信用するほどユーザーはバカじゃありません。
(なぜか制作側に回るとそう思いがちなんですが)
同じ言葉を繰り返す単語ならオルオル(喜び)も良さそうに見えますが、ダメです。
ハワイのイメージは持たせられるかもしれませんが、「オルオル」という響きは日本語にないのでそれだけではプラスなのかマイナスなのかイメージがわきません。「ふーん」で終わりです。
次に大事なのが「深さ」。
言葉としての重みというか深みみたいなものです。
ただインパクトがあるだけで意味のない言葉は最初は注目されますが、中身がないことが分かるとこれもユーザーは「裏切られた」「釣られた」「騙された」と思います。
この時点でユーザーにとってこのサイトは敵になるわけです。
もう二度と信用してもらません。
信頼は築くのは大変だけど失うのは一瞬。
これは人間関係だけでなくサービスでも同じです。
オオカミ少年みたいなものでインパクトだけの言葉は最初は注目されても繰り返すと例え事実であっても信用してもらえなくなります。
ユーザーを欺くことは絶対にやってはいけません。
というと、「利益追求にキレイごと言うな」と言う人がいますが、キレイごととか正義感で言っているわけじゃありません。
利益を追求するからこそ、欺いてはいけないのです。
どんなに複雑なシステムでもターゲットが人である以上、結局は人対人の理屈です。
上っ面だけのコミュニケーションは最初は騙せてもそのうち見抜かれます。
見抜かれたときは最初のなんとも思われていなかったときよりもマイナスの関係になります。
そして離れていくのでいつまでたっても積み上がっていきません。
話を戻します。
インパクトでひきつけたあとはその言葉の意味を知ってもらい、「ああ、そういう意味なんだ、それはいい」と前向きに捉えてもらう必要があります。
ホロホロは「散歩」という意味でタロットと直接結びつきこそしませんが、「散歩をするように気楽にうらなってもらいたい」とか「散歩をするときの穏やかな日差しのようにあなたにぬくもりを与えるタロットでありたい」というように表現次第でつなげることができます。
ここで大事なのは「深さ」だけではダメということです。
いい意味の言葉はいくらでもありますが、聞いたときにインパクトがないとその意味を知ろうという踏み込んだモチベーションにはなりません。
アカハイ(思いやり)、ロカヒ(調和)がダメなのはそれです。
言葉や字面を見ただけではハワイ感さえも与えられません。
意味は前向きですが、この意味に気付く人は英語やハワイに親しい人だけです。
そんな人は100人に1人いるかどうかです。そこを狙っても勝てません。
アカハイなどはどことなく日本語的ですが、逆にそれが災いして、「赤い杯?え、お酒?」みたいな感じになって終わりです。前向きなイメージはありません。
家電量販店の「ビックカメラ」ってありますよね。
大きい家電量販店を目指すことからつけられた名前だとイメージできます。
でも英語だとBIGはビッ「グ」なのになぜ、ビッ「ク」カメラなんでしょう?
これはバリ島のスラングに由来します。
バリ島の「ビック」は物理的な大きさだけでなく、中身を伴った大きさを表す言葉なのです。
「偉大な」みたいな意味ですかね。
ただ大きいだけの店じゃなく、良いものを揃えたお店でありたいという理念からつけられた名前なのです。
とてもいい名前ですよね。
でもこの意味知ってましたか?
どうかするとビッ「ク」ということにさえ気付かなかった人もいるんじゃないでしょうか。
それは名前にインパクトがないからです。
ビッグという英語は小学生でも知ってるぐらいありふれた単語です。
それとほとんど同じ「ビック」ではインパクトが弱いのです。
だからその言葉の持つ深い意味を知ろうというモチベーションにならないのです。
もう一つ、ハローデイというスーパーがあります。
これ、看板が英語で書かれているんですけどスペルが「HalloDay」なんですよ。
おかしいですよね。「こんにちは」のハローなら「Hello」です。
なぜか。
それは子供にも読みやすくするためにあえてそうしてあるそうです。
スーパーのお客さんは主婦層ですが、その子供のことまで考えるという理念はとても好感が持てますね。
でも、そんな意味知ってる人ほとんどイないと思います。
HelloとHalloのスペルの違いがわかりにくい上に発音だと全く同じだからです。
「ああ、こんにちは、よい一日をみたいなイメージのスーパーなんだな、いいな」ぐらいで終わりです。
これも本当は「深さ」があるのに「インパクト」が弱いせいで気付いてもらえないパターンです。
以上のように、サイト名には「インパクト」と「深さ」が重要です。
Google検索結果は文字の羅列です。
文字のインパクトだけで勝負するのです。
もちろん検索上位ほど有利ですが、タロットの検索上位は有名占い師や女性誌が提供するタロットサイト。
つまり「権威性」で決まっています。
僕たちのサイトにはそんな権威性はありません。お金も大企業のようにかけられません。
弱者が強者の戦い方にガチンコで挑んでも負けるだけです。
弱者には弱者の戦い方があります。
次に世界観について。
昨日の会議でカードの絵柄を改めて書き起こす場合のイメージの方向性をいくつか出してもらい、ヘザーブラウンという人のテイストに強い可能性を感じました。
僕は全く知らなかったんですが、知らないのに「ハワイっぽい」と思ったからです。あと一度見たら忘れないインパクトの強さがあります。
で、それを元にサイト全体のデザインを考えてもらったんですが、みんなが出してきた案は「カードが強い絵柄だからサイト全体は控えめがいいのでは」というものでした。
僕はこれに反対しました。
その理由は
・カードそのものの存在よりもサイト全体での雰囲気が大事
・シンプル=大手とガチンコ勝負になる
この2点です。
まず1つめは占いの館をイメージしてもらえばわかります。
占いの館と聞いて、あなたはどんなものをイメージしましたか?
入ると真っ暗。壁は全部遮光率200%ぐらいありそうな分厚いカーテンで覆われていて、カーテンの生地は紫のベルベットみたいなやつで、奥に座っている占い師は紫のレースみたいなのをかぶっていて、机に置かれた蝋燭と水晶玉だけが暗闇の中で怪しく輝く…
僕は占いの館など行ったことありませんが、そんなイメージをしました。
一方で真っ白なプレハブの事務所みたいな占いの館があったとしましょう。
そこで占い師から「あなた…悩みがありますね?」と言われたとしたらどうでしょうか。
前者だと「凄い!当たった!」と思うかもしれませんが、後者だと「は?当たり前だろ。悩みがあるから来たんだよ」と冷めた反応になりそうです。
これが世界観です。
そこに入ったときに今までの世界と完全に切り離すことでその世界に浸かってもらうのです。
カードを引き立たせるためにサイト全体をシンプルにするのはこの世界観の観点ではユーザーを引き込めません。
あとは先程も言いましたが検索上位は有名占い師や女性出版社のタロットサイト。
特に出版社提供のサイトは女性らしさが基本テーマなのでクリーンでシンプルなデザインになっていることが多いです。
シンプルにするということはこれらに真っ向勝負を挑むことになります。
弱者が強者にガチンコ勝負を挑んでも勝てません。
弱者が勝つには強者がしていない戦い方をしないといけません。
それは世界観で引き込むということです。
だからカードでヘザーブラウン風を使ったとしてもサイト全体でも同じようにヘザーブラウンなデザインにすればいいじゃない、と思ったんです。
確かに一般的なデザイン理論からすれば主役を引き立たせるために他を抑えるというメリハリは大事です。
でも、両方強い要素でもその間にたとえば白い背景などを挟むことで自然に見せる方法はいくらでもあります。
その方向で試行錯誤したほうが良いと思い意見をしました。
以上が今日の会議です。
まとめると、
サイト名はインパクトと深みを兼ね備えたものであること
世界観はサイト全体で演出し、ユーザーをまるごと引き込むこと
これが大事だという話でした。