プロジェクトを進めるなら10個の大岩を常に転がせ
1つのWEBサービスを作る過程を10個の巨大な大岩にたとえるとします。
この大岩1つ1つがサービス完成までの課題です。
この岩をゴロゴロ転がし、ゴール地点まで持っていけば課題クリア、全部持っていったところでサービス完成です。
そのとき、あなたはこの大岩をどんな順番で転がしますか?
僕は、順番に転がします。
ただし、転がしてる途中でその岩を放置して次の岩を転がし始めます。
最後までつきっきりで転がしきるのではなく、「ああ、このまま転がしていけばゴールまで勝手に転がりそうだ」っていうところで手放すんです。
大事なのは、1つだけを転がすのではなく、他の岩も同時に転がすこと。
これが、今日のタロットサイト制作会議の議題です。
創造力やエンタメに弱い僕はタロットサイトのプログラム的仕組みだけ作って、サイトのデザインや世界観、どうすれば楽しめるサイトになるかをチームに考えてもらうことにしました。
結果、期待以上のすばらしいデザインができました。
ただ、それはまだパワポに生成AIの画像をつぎはぎして作ったラフ段階なので、本人たちに取ってみればこれからというところです。
でも、僕はこの延長線上にもうゴールが見えました。
サイトの全体の品質に大きく関わる部分なので最優先でまずこの課題に取り組んでもらいましたが、この時点でデザイン、世界観の課題としての優先度は低くなりました。
つまり、どんなに力を入れても動かせなかった大岩が転がり始めたのです。
そしてその岩はゴール地点が見えるところまで転がりました。
もちろん最後まで転がさないと完成しませんが、僕はここで転がすのをやめるように言いました。
大岩は転がりだすまではめちゃくちゃ重いですが、一度転がり始めると手を離しても惰性で勝手に転がり続けます。
その間にまだ動いていない他の岩を転がすのです。
今回のタロットサイトで言えば、デザインは終わりが想像できるところまで来ました。
が、サイトの中身がからっぽなのです。
占うメニュー(人生とか仕事とか恋愛とか)は出来上がってるし、その鑑定結果も本番用のものができあがってます。
でも、それだけでユーザーが満足するわけがありません。
サービス制作は常にユーザーの満足を上げることを柱に動くべきです。
課題の優先順位はユーザーをより満足させられるものから解決していくべきです。
だとすると、完成が見えたデザインをこれ以上突き詰めることは優先度は低いです。
80%を完成させるには20%の労力でできますが、残り20%を完成させるには80%の労力が必要です。
8:2の法則です。
この法則はサービス制作に限らずいろんなものに当てはまるので聞いたことがある人もいるでしょう。
聞いたことなくても感覚的に体感したことがあると思います。
何か1つを作ろうとしたとき、最初はテンポよく進むんですが、だんだん鈍くなってきて、最後のところで行き詰まる感じです。
いまその残り20%に80%もの力をかける必要があるかと言われればありません。
デザインが与えるユーザー満足はサイトに来た瞬間に「うわ、すごい」というインパクトが大半を占めます。
制作している人間としては細かい部分の調整にこだわりたくなりますが、ユーザーはそんな細かいところ見ていません。
それよりも、サイトの中身を考えたほうがいいです。
鑑定結果に至るまでのカードをシャッフルする演出とか、シャッフルしてカードが出たあとに鑑定結果をサラッと出すより何かしらの演出を挟んだほうが盛り上がるのでは、とか。
少ない労力で大きくユーザー満足を上げることができる課題がまだたくさん残っています。
デザインはここまでくればいつでも終わらせられます。
どうせサイトリリースから数ヶ月は誰も知らない状態が続くんです。
その間にやればいいです。
急にSNSでバズって1日で100万PVの注目サイトになったらどうするのかって?
急いでやれば一日で終わります。
終わりが見えている課題は本気になればすぐ終わるんです。
だから放置していていいんです。
これが全く転がりだしてない課題だとそうはいきません。
どんなにヤバい!と思ってもアイデアはそう都合よくでてきません。
だから、全部を転がし、できるだけ早く各課題のゴールが見えるところまで持ってきておくことが大事なんです。
人はマルチタスクができないからまず1つに取り組めという理論があります。
その通りだと思います。
矛盾してないかって?
いえ、これは矛盾していません。
マルチタスクというのは同時に転がすことを言います。
「同時」ではなく、「順番に」転がすんです。
1つの岩を転がしている間はあくまでその課題だけに集中します。
で、ある程度できたところで手放して、次の課題に移るんです。
タスクを切り替えているだけであくまで常にシングルタスクです。
ただでさえ、重い岩を同時に転がすなんてムリですよ。1つも動かず疲れて終わるだけです。
虻蜂取らずってやつです。
1つ転がして、転がりだしたら2番目に移る。これが大事です。
そして5番目を転がし始めたあたりで最初に転がしていた1つ目が止まるかもしれません。
そしたらそこでまた1番目を転がすんです。で、転がりだしたらまた放置。
そしてこの方法を使うとトータルの制作時間の短縮になります。
別に時間短縮が目的じゃないんですが、結果的に時間短縮になることが多いです。
課題は進めば進むほど進みが鈍ることは8:2の法則で言ったとおりです。
この原因の1つに最終的な完成形が見えていないことがあります。
1つの課題だけをやっていると残りの課題はゼロのままなので10分の1も終わらず、終わりが見えないのです。
具体的な完成イメージが見えないことと、終わりまでまだ遠いという精神的なモチベーション低下にもなり、進みが鈍ります。
これが時間を浪費させます。
課題を並行で進めればそれぞれが50%の進行のとき、全体の進行も50%です。
1つだけを進めているよりも終わりに近いので、終わりが見え、やる気につながり、迷いがなくなり短時間で良いものができます。
時間はかければかけるほどいいものができると思いがちですが、そうとも言えません。
かけすぎると当初のコンセプトを忘れて、「柱」が定まらないグダグダなコンテンツになることが多いです。
タスクの優先順の決め方に有名な理論があります。
それはタスクを四種類に分類すること。
4種類とは
1.緊急で重要
2.緊急ではないが重要
3.緊急だが、重要ではない
4.緊急ではなく重要でもない
です。
お察しの通り、上から順に優先度が高いです。
誰でもこう書けば分かるんです。
でも、大抵の人は「3」か「4」をやってしまいます。
朝、会社に来てメールをチェックしませんか?
前日や夜中の間に何かあったならともかく、何もないのにそれをやってるとすればそれは「4」のタスクです。
もしかしたら重要なメールが来ているかもしれませんがそれは本当に朝一番に確認しないといけないことなんでしょうか?
朝一番は一番エネルギーがみなぎっているときです。
その貴重な時間を「4」のタスクで消費するのはもったいないと思いませんか?
なぜこんなことが起きるのか。
それは人はラクなものに流されるから。
「3」や「4」ってラクなんですよ。
休みの日は充実させたいのに昼過ぎまでゴロゴロしてしまうのも、インスタで時間を浪費してしまうのもラクだからです。
それと同じで一度転がりだした岩を転がし続けるのってラクなんですよ。
だから止まっている岩を横目で見て「あーあれを転がさないとなー」って思いながら今転がっているものを転がし続けるんですよ。
すでにそれは重要じゃなくなっているのをわかっていても。
今回のタロット会議ではそれが顕著に表れました。
だって、デザインは終わりが見えたから一度止めて中身を考えようって昨日言ったばかりですからね。
それだけズバリ言ってて昨日の今日でこれですからね。
今回はWEB制作についての話ですが、たぶんこれはWEB制作に限ったことじゃないと思います。
何かのときに少しこの考え方を照らし合わせてどっちがより望む未来に早く近づけるか、考えてみるといいかもしれません。